1 地盤について
2 宅地地盤について注意したいこと
水源から集まった水は,次第に水量を増して山の中を流れ, 山を削り,谷を広げていきます.この働きを川の浸食作用といいます.上流で削り取られた土砂は,下流に運ばれますが, 中流ではこれらの土砂の運搬が行われ,浸食作用はやや弱まり,川幅を広げる働きをします.川は傾斜が急に変わると,滝になったり扇状地を作ります. 下流では流れはゆるくなり上流から運んできた土砂を体積させていきますが,これを堆積作用といいます. 平野を流れる川は,傾斜がゆるいため,あちこち曲がりくねって蛇行し,河口に三角州(デルタ)を作ります.
図1-沖積平野模式図
図2-地形断面

地盤はその生成の年代や過程によって構造が大きく異なっています.

低地には降雨による雨水や地下水が流れてくるため,その背後にある礫や砂,微細な泥あるいは倒木,植物等を運んできます.このため何千年という長い年月の間にこれらが厚く堆積して軟弱層を形成します.
図3-地形断面図
■日本の地質年代は次表のように分類されています
●日本の地質年代●
絶対年代(万年)
新生代 第四紀 沖積世

1

170

6500

2470

57500

洪積世
第三紀
中生代
古生代
先カンブリア代
注)絶対年代とは,現代からさかのぼったその年代までの年数
上の表を簡単に説明します

沖積土は,第四紀沖積世の時代に堆積して生成された土

洪積土は,第四紀洪積世の時代に堆積して生成された土.

沖積土層は,堆積時代が新しいため,固結までは至らず,一般に軟弱な土層のままです.特に流れのゆるい河川の河口に存在する おぼれ谷後背湿地などに形成された軟弱な沖積粘土層は,基底部の礫層を覆って主に海成や河川性の粘土層が堆積したもので, 軟弱地盤の主体はこれらの粘土層や有機質土からできています.破壊や沈下などの土木工事上問題となることが多い地層です.また,自然堤防や海岸砂州などに形成された砂質の土層は, 締まりぐあいがゆるい状態で堆積しているため,地震などにより,地下水面下の砂が液状化することがあります.

洪積土層は,沖積土層に比べて一般に強く固結しており,台地や丘陵地に広く分布しています.また,この土層は,沖積土層の下に存在していることもあります.

我が国では,洪積世の時代に,火山活動が盛んであったため,火山噴出物に由来する堆積土が多く,北海道,東北,関東および九州地方に広く分布しています. 代表的なものに,関東地方の関東ローム,九州南部のしらすがあります.

また,地域的に分布している特異な清浄を示す土に泥炭真砂土があります.

■以上のように見てくると,一般に軟弱地盤とは,沖積層のゆるい砂高含水で間隙比の大きい有機質土泥炭微細な粒子に富んだ粘土シルトなどで成り立っている地盤をいいますが,構造物を施工する際に, その構造物に対して地盤の安定性や沈下量が許容値を超える場合には,上述の場合意外でも軟弱地盤の対象として扱います.

新潟地震などに見られるように,ゆるい砂の上に支持されていた構造物が,地震時には地盤が液状化を起こして構造物が支持力を失い大きく陥没,傾斜することがあります. このように地盤は通常の静的な場合には安定であっても,地震時のような動的な場合には不安定となる場合がよくあります.

新潟地震液状化により地盤が緩みビルが倒壊

(新潟日報,「新潟地震の記録」1964)
これまで出た用語の説明をしておきます.

V字谷川の上流は,深い谷になり急な傾斜を持った谷の底を川が流れます.

段丘川の流域が隆起してその両岸にできた平らな段のこと.

中流広い川原には丸くなった石が見られます.

下流河川は曲がりくねって蛇行し,方々に蛇行の名残である三日月湖が残る場合があります.

崖錘崖や,急な傾きをもった高い山地で,岩石が風化し崩れ落ちて堆積したものをいいます.

扇状地川が山から平野に出たところでは,急に流れが緩やかになり,運んできた礫や砂を平野への出口で堆積します.このようにしてできた扇形の地形をいいます.

三角州川が海や湖に入るところでは,流れが緩やかになり,運んできた細かい砂や泥を堆積します.河口の上流を頂点とする三角形をした低地になります. かつて河川の流路だったところは,砂の粒子が丸く,密度はゆるくN値は低いので地震時に液状化を起こしやすい土層が堆積していることが多い所です.

後背湿地:河川の平野部の中流域等で,かつて河川の流路だった場所が,自然堤防が形成されることによってその背後は泥水のたまり場として沼地となり, 植物の繊維質からなる有機質土が堆積したところをいいます.高含水・高圧縮性で問題の多い土層です.

おぼれ谷:海水面が海退したことによって,深く掘り下げられた谷の出口が砂州によってふさがれて沼地となり, 植物の繊維質からなる講有機質土が体積したところで,軟弱地盤中で最も高含水・高圧縮性で問題の多い土層です.本層の下位にはおぼれ谷時代の入海の海底に堆積した海成の貝殻を含む粘土層が堆積しているのが特徴です.

関東ロームは,関東地方の台地および丘陵地の上面に厚く堆積している火山灰質粘土です.

しらすは,鹿児島湾を中心とするまわりの火山からの火山噴出物のうちの破砕したガラス片状の粒子や軽石が堆積したもので,台地を形成しています.

泥炭は,沖積世に低音で多湿なところで枯死した植物が,未分解のまま堆積してできた有機質土です.この土は,粘土よりも圧縮性が非常に大きいなど,盛土工事における大きな沈下やすべり破壊を生じ事があります.

真砂土は,花崗岩地帯に見られる残積土で,風化の程度により岩石に近いものから細粒土まであり,六甲山系より西の瀬戸内海岸地方に広く分布しています.この土は,盛土や埋め立てなどに良質の材料として用いられるが,山地部では大雨のときなどに崩壊しやすい土層です.

(1)低地・湿地・・・

一般に,低地,たとえば,水路や川,池のそばは必ずといってよいほど地盤が悪いと考えてよく, また,水に関係のある漢字を使う地名は低地が多い傾向にあります.たとえば

川,沼,池,田,浜,沢,津,江,洲,崎,浦,瀬,渡,流,島,崎,泉,谷,鷺,萩など.

島根県では上の字のついたところの松江,平田,大田,江津,浜田,益田などは堆積平野で湿地帯が多く見られます.

(2)荷重と沈下・・・

地盤の弱い低地には盛土がなされますが,これは大きな荷重となって地盤の沈下を招きます.1m2当たりのおおよその重さは,いろいろ差があるために一概には言えませんが,例として木造住宅を500kg/m2と仮定すれば,延べ建坪100m2の住宅は50トンの重さになります.

その他,鉄骨住宅は600kg/m2,鉄筋コンクリート住宅は1 500kg,1m3の盛土は2 650kgぐらいあります.

これらの重量により軟弱地盤の場合,時間の経過とともに沈下(圧密沈下)が生じますので注意が必要です.

(3)標準貫入試験・・・
標準貫入試験で得られるN値は地盤の土層の軟硬や締まりぐあいなどの相対的な強さの目安とされます.N値は標準貫入試験における打撃回数です.次のような基準値が与えられています.
表1-N値と地盤の状態
  N値 硬軟 注意事項
粘性土 0~4 軟らかい 中位を要する軟弱地盤であり,精密な土質調査を行う必要がある.
5~14 中位~硬い 安定については大体問題はないが,沈下の可能性がある.
15以上 非常に硬い 安定および沈下の対象としなくてよいが,中小構造物の基礎地盤としては20以上が望ましい.
砂質土 0~10 ゆるい 沈下は短期間に終わるが考慮する必要あり.地震時に液状化の恐れがある.
10~30 中位~硬い 中小構造物の基礎地盤となりうる場合もあるが,一般に不十分である.
30以上 大構造物の基礎としては,50以上(非常に密)が望ましい.
(道路土工-土質調査指針より)
(4)スウェーデン式サウンディング試験・・・

住宅地の地盤調査はスウェーデン式サウンディング試験が行われています(2001年,国土交通省告示).

詳しいことは省きますが,100kgの錘の力でねじ状になった先端部をハンドルを回転させながら押し込んで,そのときのハンドル半回転を1回として貫入深さ1mあたりの回転数で地盤の強さの程度を判断します.

この試験の実測値で地盤の強さの程度を知るためにN値に換算することが行われています.この値を換算Nといい,粘性土,砂質土に分けて次式が提案されています.

粘性土:N=0.03・Wsw+0.05・Nsw

砂質土:N=0.02・Wsw+0.067・Nsw

ここに,Wswは荷重(錘の重さ),Nswは1m当りの半回転数を表わします.この機器で回転数に対するN値をグラフにしておき,上の表に当てはめれば地盤の状態を判断することが出来ます.
(5)沈下の例・・・(時間の経過とともに沈下する)